てんかんは、赤ちゃんからお年寄りまで誰にでも起こりえます。有病率は約1%で頻度の高い脳の病気です。
てんかんは大脳の神経細胞が過剰に興奮することにより、てんかん発作が繰り返し起こる疾患です。発作のタイプはさまざまあり、発作のタイプにより使用する抗てんかん薬は異なるため、適切な診断が必要です。脳のどの部位で神経細胞の過剰な興奮が起こっているかによって発作の症状は異なってきます。手足がけいれんしたり、意識がぼーっとなって動作が止まったり、口や手をもぞもぞと動かしたり(自動症)、身体の一部が一瞬ピクッとなったり(ミオクローヌス)します。その他に胃のあたりがむかむかしたり、懐かしい風景が見える、幻聴など自分だけに感じて、周りからみても分からない発作もあります。
正確な診断には、詳しい病歴聴取と診察、脳波検査を行います。場合によってはMRI, SPECT, PETなどの画像検査と、発作の記録(ビデオ脳波モニタリング)などを行います。
必要に応じて入院の上、長時間ビデオ脳波モニタリングを行っています。発作中の様子をビデオで録画し、発作が起きているときの脳波を記録するため、多くは服薬中の抗てんかん薬を減量します。この検査はてんかんの診断・治療において非常に重要です。以下の目的で行うことがあります。
1. 発作が本当にてんかんであるのか
2. 発作が抗てんかん薬で止まらない場合、現在の薬剤で良いのかどうか
3. 抗てんかん薬で発作が止まらない場合、外科的治療で治療が可能かどうか
発作時脳波
側頭葉てんかんの患者さんは、発作が始まる前に、胃から込み上げるような感じや恐怖感などの前兆を持っていることが多いです。その後に一点をじーっと凝視し、動作が停止し、周りの人の問いかけに反応できなくなります。そのときに口をぺちゃくちゃさせたり、手がかってに動いたりすることがあります(自動症といいます)。発作の後は、しばらくぼーっとしていますが、本人は発作があったことを、多くの方は覚えていません。側頭葉てんかんの原因としては海馬硬化症、腫瘍性病変、血管障害などがあります。
側頭葉以外にも前頭葉、頭頂葉、後頭葉にてんかん焦点があり、さまざまな発作を生じることがあります。MRI, PET, 長時間ビデオ脳波モニタリングなどの検査によりてんかん焦点を絞り込むことによって、手術が可能になることもあります。
適切な抗てんかん薬を2~3種類以上で、十分な量で治療を行っても、発作が抑制されない薬剤抵抗性てんかんに対しては、MRI, PET, 長時間ビデオ脳波モニタリングなどを行い、発作を起こす脳(てんかん焦点)を推察します。一部の側頭葉てんかんでは頭蓋内電極をスキップして外科的病巣切除術を行いますが、多くはより詳しく焦点をしらべるために頭蓋内に電極を留置してから手術を検討します。特に側頭葉てんかんは手術治療の最も良い適応になり、術後に発作から解放される方が多いです。このようにてんかん焦点を切除することにより根治が望める症例もあります。
発作頻度の減少や発作症状を緩和することを目指す迷走神経刺激術や脳梁離断術もあります。脳梁離断術を特に転倒する発作に対して有効です。
開頭手術による治療が困難な場合でも発作を緩和させる迷走神経刺激術(VNS)があります。切除術のように発作を完全に消失させる可能性は低いですが、てんかん発作の軽減を図る治療方法です。半数以上の方で発作の軽減が得られます。電極を左頚部の迷走神経に巻き付け、刺激装置を左の前胸部に埋め込みます。手術時間は短時間で、開頭も行わないので低侵襲です。
製造Cyberonics, Inc., USA/国内販売 日本光電のご好意により転載
てんかんであっても、抗てんかん薬で発作が抑制されて、問題なく社会生活を営んでいる方は沢山いらっしゃいます。
一方でてんかん患者さんは、てんかん発作以外においてもさまざまな悩みがあります。
運転免許や仕事、結婚、妊娠や出産、金銭面、てんかん併存症、薬の副作用などさまざまなことで悩んでいるてんかん患者さんが多く、各診療科および患者支援センターや他施設と連携して、チームでサポートするように取り組んでいます。