てんかんの外科治療について

てんかんの外科治療は薬物療法では発作が治まらずに困っている患者さんに対して、発作の消失や軽減を目標に行われている治療です。
てんかんの原因によっては80% 以上の患者さんで発作の消失が期待できる場合もあります。もちろん全ての手術でそれだけの効果が期待できるわけではありませんが、発作の消失はてんかん外科の大きな目標です。
また患者さんの生活の質(QOL:Quality of Life)を改善することも目標にしています。例えば、手術によって転倒発作がなくなれば、困っていた患者さんやご家族の生活にとっては大きなプラスになることも期待できます。

どのような人が受けられるの?

てんかんの外科治療の対象となるのは、薬剤抵抗性の患者さんに限られます。「薬剤抵抗性」とは、適切な抗てんかん薬を十分な量で単剤あるいは併用で、2 剤試みても、一定期間(一般には1 年以上)にわたって発作が抑制されない状態を指します。
その上で、外科治療が可能なてんかんとして、

① 内側側頭葉てんかん
② 器質病変が検出された部分(焦点)てんかん
③ 器質病変を認めない部分(焦点)てんかん
④ 片側大脳半球の広範な病変による(焦点)てんかん
⑤ 転倒発作(失立発作)をもつ薬剤抵抗性てんかん

の5つがあります。
器質病変とは脳腫瘍や皮質形成異常など、画像検査によって指摘することができる病変をいいます。

手術を受けるまでの流れは?

まずは外来を中心に脳波検査や画像検査を行い、発作の原因となっている部分(焦点)を見つけ出します。
外来で行う検査だけでは焦点が分からないことも多いため、入院して発作と脳波を同時に記録するなどして、さらに焦点を絞り込みます。
手術による効果が期待できると判断すれば、いよいよ手術を計画することになります。

どんな手術があるの?

てんかんの外科手術には大きく分けて、発作の消失を目指す「根治手術」と発作の頻度を減らしたり、発作の程度を軽くしたりする「緩和手術」があります。以下に、主な手術を示します。

ⓐ 焦点切除術(根治手術)

最も多く行われているのは海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかんに対する手術です。完全に発作が消失する割合が80%以上と言われており、薬物療法より効果が優れていることが証明されており、手術の効果が最も期待できる手術です。

ⓑ 脳梁離断術(緩和手術)

左右の大脳半球を結ぶ脳梁を切断し、神経の連絡を絶つことで発作を抑制させる手術です。特にレノックス・ガストー症候群などでみられる転倒発作に対する効果が高く、発作が完全に消失するのは10%程度ですが、転倒発作については80%以上で消失するとされています。

ⓒ 迷走神経刺激術(緩和手術)

左頚部にある迷走神経と呼ばれる脳神経に電極を巻き付け、前胸部に埋め込んだ刺激装置を用いて、一定間隔で電気刺激を与える治療法です。開頭手術の対象にならない患者さんや開頭手術の後にも発作が残っている患者さんが対象になります。一般に半数の患者さんで発作の頻度が半分程度になると言われています。

リヴァノヴァ社より提供

てんかん発作が止まらずに困っている患者さんに伝えたいこと

てんかん治療のゴールはQOL の改善です。QOL の改善の一つとして、てんかん発作の消失や緩和は重要であり、てんかん外科治療が大きな助けとなってくれる可能性があります。どのような手術が適しており、実際に見込める改善の程度はどのくらいなのかは、それぞれの患者さんによって異なります。てんかんセンターでは、それぞれの患者さんと向き合い、十分に相談を行った上で慎重に手術治療を検討しています。
薬物療法では発作が治まらずに困っている患者さんは、かかりつけの先生と良く相談し、てんかん外科の門を叩いてみてはどうでしょうか。