てんかん患者の生活、福祉、制度などについて

発作以外の悩みについても、対応していきます

てんかんであっても、抗てんかん薬で発作が抑制されて、問題なく社会生活を営んでいる方は沢山いらっしゃいます。
一方でてんかん患者さんは、てんかん発作以外においてもさまざまな悩みがあります。
運転免許や仕事、結婚、妊娠や出産、金銭面、てんかん併存症、薬の副作用などさまざまなことで悩んでいるてんかん患者さんが多く、各診療科および患者支援センターや他施設と連携して、チームでサポートするように取り組んでいます。

てんかん患者の学校での生活

学校生活を送る上での基本的な考え方

  • てんかん発症は小児期に多くみられます。
  • このため、医学的なてんかん発作の治療も大事ですが、同じぐらい子どもたちが学校や社会に出ていき成長する機会を確保することも大切です。
  • 同じてんかんという診断でも、発作の重症度や知的・発達障害などの併存症の有無などにより、注意する点や必要な支援は変わります。

1. 学業に関して

  • てんかんに罹患している子どもであっても、知的・発達障害などの併存症がなければ、特別な配慮は不要です。
  • 一方で、知的障害、発達障害の特性、などを有する子どもには、十分な教育機会を確保するため、支援学級もしくは特別支援学校での個別指導が望ましいケースがあります。
  • 薬剤の副作用による強い眠気は学校生活に支障をきたします。主治医とよく相談しましょう。

2. 体育の授業に関して

  • 運動は、身体機能の向上、他の子どもたちと協力する力を育てる、など子どもの成長にとって大切です。
  • 主治医からの指示、「てんかん児の生活指導表」、などを参考に、参加可能な運動には積極的に参加しましょう。
  • ただし、発作のコントロールが十分でない子ども、体温上昇で発作が誘発される子ども、などでは制限が必要なケースがあります。また、激しくぶつかり合うもの(ラグビー、柔道、など)、高いところで行うもの(鉄棒、登り棒、など)、などは発作時の外傷リスクが高くなります。
てんかん児の生活指導表  小児保健研究 2006;65(2):207-211)

3. 水泳の授業に関して

  • 発作時に意識が消失した場合は、溺水のリスクがあるため、注意が必要です。また、体温上昇や疲労に伴う発作の誘発にも注意が必要です。
  • ただし、発作が十分にコントロールされている場合は、「てんかん児の生活指導表」を参考に参加が許容されることがあります。
  • また、発作がコントロールされていないケースでも、十分な個別の監視体制がある場合(特別支援学校など)では、例外的に水泳の授業に参加しているケースもあります。

4. 発作時の対応(宿泊行事も含めて)

  • 事前に保護者、学校関係者の間で、発作時の対応を協議しておく必要があります。
  • 具体的には、発作時の学校関係者の役割分担、救急車を呼ぶタイミング、発作を止める座薬を投与、などに関してフローチャートを作成しておくのもよいでしょう。
  • 宿泊行事には、できる限り参加しましょう。 ただし、発作回数が多く、リスクの高い患児では、旅先での発作時の対応について事前に医師に確認する必要があります。緊急時に受診できる近隣病院を事前に確認しておくとよいです。

こどもは、学校や地域社会での活動への参加を通じて成長していきます。てんかんに罹患しているこどもが学校生活において過度の制限がかからないように、また充実した学校生活が送れるように、関わる人すべてが支援していく必要があります。

てんかん患者さんが利用できる福祉制度

さまざまな制度のうち、3つの制度についてご紹介します!

自立支援医療制度

入院以外の医療費(公的保険適応)の自己負担が1 割になります。所得に応じて、1 か月あたりの医療費の上限額が定められています。
申請をしたときに登録した医療機関で利用できます。(登録できる医療機関は原則1 か所ですが、自治体によって対応が異なりますので、担当窓口でご確認ください。)有効期限は1 年間です。1 年ごとに更新が必要です。

  • 利用できる方 てんかんを含む精神科の病気で通院による治療が必要な方が対象です。
  • 申請の窓口   お住まいの市町村の担当窓口(障害福祉課など)

精神障害者保健福祉手帳

てんかんのある人が一定の障害状態にあることを証明するものです。また、福祉サービスの利用や各種減税制度の適用を可能にする証書でもあります。どのようなサービスが受けられるかは、お住まいの市町村申請窓口でご確認ください。有効期限は2 年間です。2 年ごとに更新が必要です。

  • 利用できる方 てんかんを含む何らかの精神疾患により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある方が対象です。
    手帳を受けるためには、その精神疾患による初診から6か月以上経過していることが必要になります。
  • 申請の窓口  お住まいの市町村の担当窓口(障害福祉課など)

障害年金

病気やけがによる障害で日常生活・社会生活・経済生活に困難が生じている人に、障害に応じた額の年金を支給します。障害年金の認定には「有期認定」と「永久認定」があり、てんかんは有期認定です。定期的に診断書など現況を報告する書類を提出する必要があります。障害の状態に変化があった場合は、等級が変わることや支給が停止になることがあります。

てんかん患者さんの災害対策

  • 日頃から常備薬、お薬手帳などの備えをしておきましょう
  • 災害が発生したら、落ち着いて行動しましょう
  • 遠慮せずに、周囲に協力をお願いしましょう

大地震など、地域全体を巻き込む規模の災害が起きた場合、医療機関も薬局も被災して機能が停止するため、日頃から防災意識を高めておきましょう。てんかん患者さんの場合、災害時のストレスや、睡眠不足、薬の中断は、強い発作やてんかん重積が起きる可能性があります。医薬品など必要なものを災害などの緊急時用に備えておくことは、自分自身を守ることであり、また災害時の不安を軽減してパニックにならない心の準備にもつながります。インターネットでもあらかじめ情報が収集できます(波の会、災害対策ガイドなど)。
普段から主治医に自分は全般てんかんか部分(焦点)てんかんか、発作のタイプなどを尋ねてみましょう。
災害が起きた場合、まずは自分の身を守ることからはじまります。非常持ち出し品の準備、避難の方法、支援の要請、可能であれば避難の前に行う事などは、常日頃から準備・訓練しておくことが大切です。

災害時に最低限持ち出すべきものリスト

□ 常備薬
□ 携帯電話、携帯ラジオ、充電器など情報関係
□ お薬手帳(コピーでも可):災害時にはおくすり手帳があれば処方箋なしでも薬がもらえる可能性が高い
□ 保険証(コピーでも可)
□ てんかん緊急カード
□ 日常生活に必要なもの(保存食、飲料水、衣類、簡易トイレなど)
□ 足を守る用語(底の厚い靴、靴下など)

※最低1 週間分(1 ~ 4 週間分)の備蓄をする
※常備薬やお薬手帳のコピーはご家族にも持っておいてもらいましょう
※普段から外出時にも常備薬は持ってでかけるようにしましょう
※学校・勤務先・福祉事務所などへも病状や服薬内容などの情報を分散管理しましょう

避難行動要支援者名簿について

避難に困難を伴う場合、障害者や高齢者等の要配慮者のうち、自ら避難することが困難な方(避難行動要支援者)の名簿作成を自治体が行っていますので問合せしてみて下さい。

災害が起きたら

災害が起きたらまずは、落ち着いて身の安全を確保することが重要です。安全確保ができるような場所・避難所へと移動しましょう。
避難所では自分がてんかんで、毎日の治療が必要であることを申告しましょう。申告する相手は、医療班、理解のある周囲の人、相談できる人、リーダー的立場のひとなどです。
てんかんについて自分や家族が知っておいて、誤解されないように説明できるようにしておきましょう。この時、てんかんについて次のような点を説明すると誤解を避けることに役立ちます。

  • てんかんは脳の病気で、およそ100 人に1 人の病気です。
  • 人に感染することはありません。
  • 毎日治療を続けることが必要です。
  • てんかん発作は通常自然に治まります。
  • 発作が頻回に起きる場合や5 分以上けいれんが続く場合、意識障害が続く場合には、すぐに医療班に連絡が必要です。

周りに相談できる人を見つけましょう

孤立は不安を強め、十分な治療を受けることができなくなったり、精神症状が悪化することにつながるので、周囲の人とも交流をはかり、周りに相談できる人がいる環境を作るようにしましょう。

エコノミー症候群の予防をしましょう!

避難所では、あまり動かずに活動量が低下する上に同じ姿勢でいることが多く、トイレ事情が良くないために水分摂取を控える人が多いことも影響して、エコノミー症候群の危険性が高まります。避難所でもこまめに体を動かし、エコノミー症候群を予防しましょう。